「じゃ、行くか」
「……“デート”、ですか?」
「開き直ってんだろ、おまえ」
ななめ上にある奥二重が居心地悪そうに苦笑している。
やはりイエスとは言ってくれないけど、ノーとも言わないから、いまはそれだけで満足しておこうかな。
だけど、先輩って、元来けっこうずるい人なのであった。
「そうだよ」
エンジンをかけ、車体を発進させる瞬間、背中越しに静かにくれた肯定の言葉。
時差のありすぎるその返事に、どうしようもないほどうれしくなってしまって、体をじたばたさせたいのにバイクはすでに走りはじめているから叶わず、フルフェイスのヘルメットのなかでひたすらニヤけるしかない。
制服越しに感じる背骨が、ちょっとした振動があるたびにぶつかって痛い。
このままこの時間が一生つづけばいいのに、なんてチープな願いを抱きながら、かたいお腹に腕をまわして、広い背中に体をあずけた。



