アイ・ラブ・ユーの先で

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話好きの魚住先生は、ホームルームでけっこう長くしゃべることが多くて、きょうもその例外ではなかった。

朝から祈りつづけていたのに、無念。
ほかの日は陽が暮れるまでしゃべってくれていいから、どうかきょうだけは3分で終わって、と。



「――先輩っ」


長い脚を投げだし、バイクの座席にもたれるように腰かけていた背中に呼びかけると、黒い髪が反応して少しだけ揺れた。


「よう」


口角がかすかに笑んでいる。

たったそれだけのことで、こんなにも幸福を感じられるなんて。


「ちょっと遅かったな。なんかあった?」

「あ、なにもないんですけど、うちの先生がけっこう話好きで」

「担任? おまえんとこ、誰だっけ」

「魚住先生です」

「ああ、ウオチャンか。なつかしいな。たしかに話はほんとに長いけど」


1年のころ現代文もってもらってたんだよ、と、先輩は言葉通りなつかしそうに目を細めた。

その事実に2年の差を感じるよりも、まったく皆無だったわたしたちのあいだにひとつの共通点が生まれた気がして、うれしくなる。


高校1年生の水崎昂弥はどんな男の子だったのだろう。

毎日見ているクラスメートの男子の姿を思い浮かべて、重ね合わせてみるけれど、どうにもうまくいかない。


そこでやっと2年の差を感じて、おかしな寂しさをじんわり感じていたら、突然すっぽりヘルメットをかぶせられた。