「……おまえさ、よくそんな恥ずかしいことをホイホイ言えるな」
「うう……いま自分で言いながら最大級に後悔してるところなので、そっとしといてください……」
だけど、先輩、笑っている。
それに、“デート”という単語、否定しなかった。
「あの、あした、楽しみです。ホームルーム終わったら秒速で行きます!」
うん、と先輩は簡単に言った。懸命に笑いを抑えながら。
そして、オヤスミと、わたしの耳にじかに入れるように、とても優しく言った。
電波が途絶える。
どうしようもなく、どきどきしている。
いまにも爆発しそうなそれでなく、五臓六腑をくまなく撫でていくような、静かで、熱い血流。
「――お姉ちゃん」
はっとした。
あわてて声のほうへ視線を移すと、いつからいたのか、パジャマ姿の侑月が半分開いたドアのむこうでわたしを見つめていた。
「あ……侑月、ごめん、ぜんぜん気づかなくて。なんだった?」
「うん……。あのね、きょう、いっしょに寝てもいい?」
迷いながら遠慮がちに紡がれた言葉は、中学生にもなってこんなふうに甘えている自分のことを、どこか恥じているようにも見えて。
いつから妹はこんな表情をできるようになってしまったのだろう、と、少しの寂しさと共に、愛おしさみたいなものもこみ上げてきてしまう。



