アイ・ラブ・ユーの先で

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悩みの種というのは意外とあっさり消え去ってしまうことのほうが多いのかもしれない。

しばらく本当に先輩からは音沙汰なしで、こんなに悶々とするならいっそ連絡してしまいたいような、こちらからはもう二度としたくないような、葛藤の数日を経て、やっとスマホは彼の電波を受信してくれたのだった。


【着信:公衆電話】


スマホの液晶がパッと着信画面に変わった瞬間、ベッドでごろごろしていたのをあわてて正座する。

夢かと思って、ゴシゴシ目を擦ってみたけど、表示は変わらないままだった。


いや、いまは無駄にアレコレ考えている時間なんてない。

この振動が終わってしまう前に、とにかく通話ボタンを押さなければ。


「よう」


薄っぺらい機械を耳に押し当てたと同時に、むこうで低い声が短くそう言った。

正真正銘、水崎昂弥先輩で、なんだか泣いてしまいそうだし、逆に笑い転げたくもなってしまう。


「こ、こん、ばんは!」

「お。きょうは元気そうじゃん」


こっちはものすごい緊張してミドリのボタンをタップしたのに、なんだ、その気の抜けたせりふは。


「きょうは、ってなんですか」

「前は繋がるなりいきなりぴーぴー泣きはじめたからな」

「……もう泣かないです」

「そりゃあ助かる」


クックと笑っている音が聞こえる。

いつも通り。

それはすごくありがたいのだけど……本当にすごくいつも通りすぎて、あの花火大会の夜のこと、なかったことにされているのではないかと、少しの不安が胸によぎった。