どれくらい走っているんだろう。
入学式の日、あの黒いバイクに拾ってもらったまでと、どっちが長いだろう。
距離にしたらあの日のほうが長いかもしれないけど、走るのに最悪すぎる格好なぶん、時間にしたらきょうのほうが長いかもしれない。
そんなことはどうだっていい。
そろそろ足が痛い。
限界に息が苦しい。
とにかく、ぜんぶが信じられないほど熱い。
からだも、あたまも、こころも、指先も、そして――
「――おい、阿部佳月」
“走りながら泣いてるってやべえね”
はじめて会った日と同じせりふを、彼は口にさえしなかったけれど。
怒ったような、呆れたような、笑っているような、なんともいえないまなざしに、そう言われている気がした。
「せんぱい……」
いつも、黒いバイクに乗って登場する。
いかつい相棒をノロノロ運転しながら、徐々にわたしのほうへ近づいてくると、彼はやがて左足をアスファルトにつけて停車した。



