アイ・ラブ・ユーの先で



「佳月ちゃんってさ、いつも、誰に対してもそんな感じなの?」

「え?」

「なんていうんだろ、甘えを見せるのは絶対悪!みたいな? もしかして、誰かに甘えたりするのが苦手なのかなーと思って」


あまり自己分析には長けていないので、うまく答えられないでいると、佐久間先輩は再び前方をむいて長いまつげを伏せたのだった。


「もしかして、昂弥はさ、佳月ちゃんのそういうところを放っておけないと思ったのかな」


せっかく半強制的に遮断した、思考回路。

それを、まったくの不可抗力で、無理に開かれた感覚だった。


どく、どく、どく、
体の真ん中にある、心臓とは違うなにかの臓器が大きく脈打ちはじめる。


「昂弥ってね、かなりの世話焼きなんだよ。見て見ぬふりって概念が抜け落ちてんの。ほんと、すごくね、優しい男だよ」


そんなことは、知っている。
ちゃんと、知っている。

だって、わたしは、先輩にそうしてもらった人間だから。


「昂弥はあんまり自分のこと話してくれないし、実はよく知らないんだけどさ……佳月ちゃんと昂弥って、ぶっちゃけいま、どういう関係なの?」


ぜんぶお見通しだけど、わざと、とぼけているような。
それでいて、本当に、なにひとつ知らないような。

佐久間先輩は歩みを止め、そのどちらとも取れない表情を浮かべながら、核心をつくみたいにゆっくり口角を上げたのだった。