「佐久間先輩はなにが好きですか?」
負の方向へ突き進んでいく思考回路を遮断するために、無理やり訊ねた。
「え、おれ? おれはねー、そうだな、やっぱり屋台といえば、わたあめとか、りんご飴?」
「なんか女の子みたいな好みですね」
「そうそう、女の子と喧嘩になりにくい好みしてんだよね、おれ」
そう言いながらも結局ベビーカステラを買った佐久間先輩は、屋台に寄ることで奥先輩と結桜のペアからはぐれて、さりげなくふたりきりにすることを成功させてのけたのだった。
本当に抜かりない人だ。
へらりと笑う笑顔のむこうでなにを考えているのか、すぐにでも掴めそうで、まったく掴めない。
「疲れてない? 足、痛くない?」
袋詰めのベビーカステラがなくなるころ、他愛もない会話の途中で、佐久間先輩が気遣うように訊ねてくれた。
捉えようによってはかなりわざとらしいせりふなのに、ぜんぜんわざとらしくない響きなのが不思議。
ただひたすら甘いだけじゃなく、たまにくれるこういう優しさに、ひょっとしたら女の子はコロッとやられてしまうのかもしれない。
「はい、大丈夫です、ありがとうございます」
うなずいて歩を進め続ける。
横顔をじっと見下ろされているのを感じて、ちらりと右側をむくと、なんともおかしなまなざしと目が合った。
これは、いったい、なんの顔?



