それにしても、この人って誰に対してもこんなふうなのかな。
いろんな女の子と超遊んでいるらしい佐久間先輩は、これまで本気で誰かを好きになったこととか、あるのかな。
よけいなお世話もいいところ。
「まあ、冗談だから安心してよ。佳月ちゃんに手出したことがバレたら、おれ、昂弥に生かしておいてもらえないと思うんで」
ふいに、けれど当然のようにその名前が出てきて、下駄のつま先がアスファルトに少し引っかかったのを、佐久間先輩は見逃してはくれなかった。
「あー、そうだよね、言いそびれてたけど、ごめんね? きょうの相手、おれで」
「なんのことですか? べつに、わたしは……」
「昂弥よりおれのほうがいいかもって思ってもらえるくらい、佳月ちゃんが楽しめる努力はするからさ、許してよ」
おどけたふうなのに、どこかまじめな声色に追い詰められて、逃げ道を失ってしまう。
まだ自分でもわからない、知らない、認めていない、認めたくない、心のそういう部分を、まるごと見られているみたいで、すごく居心地が悪い。
「……水崎先輩は、元気ですか?」
「うん、元気だよ。相変わらずたまに学校来たり、バイトしたり、忙しそうにしてる」
「そうですか」
「素っ気ないね。昂弥が泣いちゃうよ?」
思わずムッとしてしまったのは、佐久間先輩のからかうような発言のせいだろうか、それとも……。



