先輩がたは和装をせず、私服だった。
奥先輩は和服が似合うだろうなあ、なんて妄想を膨らませていた結桜は少し残念そうにしていたけど、顔を見て挨拶を交わしたとたん、そんな憂いはどこかへ吹き飛んでしまったみたいだ。
無表情で寡黙な奥先輩へわかりやすくアプローチをはじめた結桜にかわって、隣にやって来た佐久間先輩がへにゃりと笑う。
「佳月ちゃん、浴衣かわいーね。というか綺麗! どこの大和撫子かと思って見とれちゃった」
この世のお世辞の集大成みたいなことを口走るので、こっちはどんな顔をすればいいのかわからず、とりあえず頭を下げた。
「こんにちは。無理なお誘いだったにもかかわらず、きょうは来てくださってありがとうございます」
「えー、ちょっとカタすぎない? ぜんぜん来るよ。結桜ちゃんと一慶のためじゃん」
「意外と友達思いなところもあるんですね」
「意外と、がよけいなんだよなあ。やー、一慶もホントに女っ気ないからさ、今回のことはおれもワクワクしてんだよね。うまくいくといいね」
子犬のように次から次へとしゃべりかける結桜と、それを聞いているのか聞いていないのかもよくわからない奥先輩。
数歩分だけ前を行くふたりに視線を移し、「そうですね」と相槌をうつ。
「あ、ついでに、おれと佳月ちゃんも、みたいな?」
「……それはてきとうに聞き流しておけばいいですか?」
「なかなか言うねえ。これでもおれ、けっこう女の子からは評判いいほうなんだけど」
きっと自意識過剰でなく、間違いなくそうだろうな、と思う。
この、極上に優しくて、甘ったるくて、やわらかい雰囲気にのまれてしまう女子は、きっと少なくないはず。



