「なんで……ここで、水崎先輩がでてくるわけ」
「ええ? だって……」
言葉を慎重に探しているように、結桜が瞳を左右に泳がせる。
「奥先輩と花火大会いけそうだよ、って言ってもらえたとき本当にうれしかったけど、佐久間先輩と4人で、って言われたときはそれ以上にびっくりしたんだもん。佳月は……水崎先輩を誘うと思ってたから」
お見事、そのとおりで、誘って、そして、断られたんだ。
あまりにかっこ悪くて誰にも言えずにいる。
佐久間先輩は察しているみたいだったけど、なにも聞かないで、こちらの誘いを快諾してくれた。
そのかわり結桜の奥先輩への気持ちは吐露させられてしまったけれど。
「いやあ、だってあの人、花火大会ってガラじゃなくない?」
「あははー、たしかに! こういうのは佐久間先輩のほうが楽しませてくれそうだよね。いろんなコと遊びまくってるらしいよ? 顔も性格もアレだからしょうがないんだろうけど」
アレ、という言い方に笑ってしまった。
結桜は本当に、佐久間先輩みたいな甘いのでなく、奥先輩のような屈強な男が好きなんだろう。
「だから、佳月も! きょう、くれぐれも気をつけてね。手出されないように!」
仕上げに下駄を履き、梅雨明けのにおいのする夏空の下へ飛び出した。
いつのまにか、とても陽が長くなった。
まだまだ明るい南にむかって、カラコロ軽快な音を鳴らしながら、のんびりふたりで歩いていく。



