「そういえば、きょうはダブルデートなんだよね?」
「えっ」
真紅の帯がギュッとお腹を締めつけて、その拍子に少しだけよろけてしまった。
「あら、違った? 結桜が、佳月ちゃんのおかげで好きな先輩と花火に行けるんだーって喜んでたから」
ああ、そんなことまで母親に話すんだな。
わたしはお母さんに、誰を好きだとか、そういうたぐいの話をしたことって一度もないかも。
さとくんのことだって、家族の誰も知らないでいるし。
「結桜はまだ片想いみたいだけど、佳月ちゃんのほうは、つきあってるの?」
「あ、いえ……」
「あら! 佳月ちゃんも片想い?」
つきあう、とか、片想い、とか。
佐久間先輩は、そういうんじゃないのだけど。
「もー、ママ、そういうナイーブな話題にずけずけ踏み入ってこないでよね!」
答えあぐねているわたしを見かねてか、すかさず結桜が助け舟を出してくれた。
「ちょっとくらいいいじゃない。ママだって恋バナしたいんだもん」
「ダモンじゃない。かわいくないっ」
鮮やかな橙の浴衣に身を包みはじめている結桜は、これから起こるかもしれない幸せへの期待でいっぱいに見えて、とてもまぶしかった。
きれいに着付けてもらった浴衣を姿見で確認しながら、わたしはなんのためにおめかししているのだろう、と改めて思う。
佐久間先輩のことだから、きっとあの軽いノリで「かわいいね」なんて褒めてくれる気がする。
でも、そのときちゃんと笑ってお礼が言えるのか、いまから不安だな。



