「言っとくけどさー、結桜のチビはママの遺伝だからね?」
「あらまー、それは失礼しました」
12畳もあるだだっ広い子ども部屋で、女子ふたり分の浴衣をならべながら楽しそうにポコポコ会話をする親子を眺めながら、いいなあ、と思わずにいられない。
結桜は、外では自分のことを『ウチ』と言うけれど、家族の前では『結桜』と名前で言うんだな。
おたがいに小さな悪口を言いあうのはきっと戯れで、実はとても深い愛情表現なんだろうな。
うちとはぜんぜん違う。
もしかしたら、世の中にはきっともっとたくさんの “家族のかたち”があって、まだまだわたしはそれを知らないのかもしれない。
「じゃ、佳月ちゃんのほうから着付けちゃおうかな。ここ立ってくれる?」
結桜のお母さんはムスメそっくりで、きょうはじめて会ったとは思えないほどフレンドリーな人だ。
指定されたカーペットの上に立つと、デニムとブラウスをするする脱がされ、あっというまに下着姿にされてしまった。
「佳月ちゃん、ほっそーい! ちゃんと食べてる?」
「いえ……あの、食べてます、すみません、貧相なからだで……」
「なに言ってんの! おばちゃんのお肉分けてあげたいわあ」
結桜のお母さんは迅速かつ的確に浴衣を着付けながら、絶えず口元もせわしなく動かし続けた。
口調とか、語尾の感じとか、しゃべり方が結桜とすごく似ている。きっと普段からたくさん会話をしているのだろう。



