まさか断られてしまうとは思わなかった。
本当に不思議だけど、先輩のことだから、いいな、行こうって、なんならむこうからちょっと強引気味に言ってくれるはずだと、なぜかそう信じて疑っていなかった。
今度はまったく違った意味でカッカと顔が熱くなる。
「でも……友達が、実は、奥先輩のこと気になってるみたいで」
耐えきれない羞恥に敗北して、とってつけたような言い訳を口走ってしまった。
「一慶?」
「だから、その……できれば協力してあげたいというか。先輩にも、できれば」
「悪いな」
それ以上を、先輩は言わせてくれなかった。
「そういうことなら、俺より澄己に頼め」
「え……」
「あいつなら暇してると思うから。ま、すでにほかの女と約束してたら、そのときはまた相談してこい」
ちがう、そうじゃなくて。
「……わかりました。聞いてみます」
けれどここまで言われておいて、さすがにもう、どうにもできない。
いつのまにかお腹のあたりで固く握りしめていた両のこぶしを、ゆるゆるとほどいていくほかなかった。
「俺からも聞いといてやろうか?」
「いいです。佐久間先輩の連絡先、知ってるので」
少し突っぱねるような言い方をしてしまったからか、先輩はなだめるようにもういちど「悪いな」と言った。
でも、スケジュールを調整するとは、とうとう言ってくれなかった。



