こんな発言も、真実を聞かないで、先輩と仁香さんをきょうだいだと思いこんでいたままなら、妹想いの素敵なお兄ちゃんだなあ、と思うだけだっただろう。
だけど、ふたりはきょうだいじゃなくて、それなのに同じ屋根の下でずっと過ごしていて、おまけに仁香さんにとっての初恋の相手が先輩なわけで。
そういう事実を知っているいま、よこしまな妄想をせずにはいられない。
それに、嘘つきな先輩のことだ。
仁香さんのことをふった理由、妹みたいなもんだろ、って、果たしてそれは本当の気持ちだったのかな?
複雑な関係を憂いて、本音を隠しているだけなんじゃないのかな?
「……たしかに、仁香さんって、グイグイくる感じしますもんね」
「ははっ、けっこう言うな、おまえも」
「決めたら一直線みたいな。諦めも悪そうだし、自信家っぽいし」
「ああ、そうだな、そういうところはあるよ」
「だから、先輩にも、夜這いかけたことあるって」
――ゲェホ、
とおもいきり噎せたのが、それが真実であるという証だ。
「先輩は仁香さんの初恋だって聞きました。告白もして、それで……ふられたって」
「そんなことまでしゃべったのかよ、あいつ」
「先輩のことをべらべらしゃべったんでなく、あくまで仁香さんは自身の初恋の話をしてくれただけです」
「ああ、そうかよ、そういうことならしょうがねえな」
てきとうな相槌に、この話題は早く終わらせてしまいたいという気持ちが透けて見える。
終わらせてたまるものかと、こっちも意地になる。



