赤い夕陽が西の窓からこうこうと差しこんでいる。
駐車場でその光を受けながら、3台ならんだバイクがぴかぴかと輝いているのは、わたしにとってとても新しくて、とても美しい光景だった。
「……でもね、ある程度の年数を生きてきた僕なんかからしてみれば」
それでも、わたしはどうしても、いまはあの場に欠けているはずの真っ黒の車体を、恋しく思ってしまうのだ。
「生き急いでるってのは――死に急いでるのと、同じことだよ」
はっとして顔を上げる。
目が合うと、オーナーさんは目を細めて微笑んだ。
目尻に、いつもの皺は、刻まれなかった。
「あの子ががむしゃらに進んだ道の先に、待っているのは希望であってほしいよ。いつも、とても無責任なことしか言えなくて、なにもできなくて、情けないけれどね……本当に」
なにも、わからない。
先輩はこれまで、なにを見ながら生きてきたのだろう。
なにを感じて、なにを吸いこんで、なにを吐きだしながら、生きてきたのだろう。
惰性のようにただくり返せばいいと言った呼吸。
それを、これからも続けていくために、ちゃんと生きている?
わたしは彼のことをなにも知らない。
精いっぱい守っているというものについても、限りなく捨ててきたというものについても、本当に、なにひとつとして。
それを、こんなにも悲しく、さみしく、切ないことだと感じるなんて。
自分勝手で、欲張りで、あさましい、恥ずかしい気持ちだということなら、わかっている。
こんなもの、いますぐにでもすっかり消し去るべきだということも、わかっている。
だって、わたしはこれまで完璧にそうだったように、これからもきっと、ずっと、何者にもなれないはずだから。
――それでも。



