「え、皿洗い? そんなのいいよ。本当に、気にしないで」
愛娘のきれいなワンピースを身にまとっていきなりお店に現れたわたしの申し出を、仁香さんのお父さんははじめ、丁重に断った。
それでも負けじとものすごくお願いした。
突然やって来た得体の知れない小娘を怪しまないどころか、こんなによくしてもらっておきながら、タダで帰るわけにはいかない。
そう何度も伝えた甲斐があってか、最終的にはむこうがポキリと折れてくれたのだった。
土曜だからか店内はけっこう混雑している。
忙しいときはもちろん懸命に働きつつ、比較的ゆったりした時間帯は、気さくな店主は他愛のない話なんかもしてくれたりした。
「最初はカッコつけて断ったけど、きょうは佳月ちゃんがいてくれて大助かりだったよ。実はバイトのコが急用だってんで、直前で欠勤になっちゃって……」
いつのまにかすっかり夕方になり、店内も落ち着いたころ、キッチンのなかでいっしょにまかないを食べながら、オーナーさんはばつが悪そうに告白した。
特製のオムライス。家庭で出るような素朴さと、お店で食べるものの高級感、双方のいいところだけを詰めこんだ味がして、本当においしい。
「え、そうだったんですか?」
「うん、でも、手伝ってもらったことがバレたら、きっと昂弥には怒られちゃうだろうなあ」
内緒にしといてくれる?と肩をすくめる姿に、こちらも思わず、いたずらめいた心がむくむくと育ってしまう。



