アイ・ラブ・ユーの先で



「――あっ、すみません!」


足元を確認しようとうつむきかけたところを前方から呼び止められる。

引っぱられるように顔を上げると、頭のてっぺんにフワフワのお団子を乗せた小柄な女の子が、慌ただしくこちらにむかって走ってきていた。


「それ、ウチのです!」

「え……」


おそるおそる足を上げる。

上履きの下からひょっこり顔を出したのは、薄いピンクの、とてもかわいい、それでいてかなり新しそうな、タオルハンカチだった。


「こんなところに落ちてたんだ! あー、見つかってよかったあ」


ぜんぜんよくないと思うのだけど。
他人の上履きにおもいきり踏まれながらだなんて、こんなに最悪な発見の仕方はないでしょうに。


「踏んじゃってごめんなさいっ」


頭を下げるついでに慌てて拾い上げた。
見た目の通りとてもフカフカの手ざわりで、やはり間違いなく新品に近いと悟る。

わたしの上履きも今しがた下ろしたばかりなので、靴の裏はそこまで汚れていないし、そういった意味ではまだマシだと思うけど、そういう問題でもないな。


「ううん、落としたウチが悪いんだよ。逆にごめんね、ありがとう」


それでも彼女はかわいらしい笑顔をむけてくれながら、なんの嫌味もなくそう言った。

ほっとしつつ、汚れを少しはらったあと、ハンカチを手渡しながら気づく。


「あ……これ、もしかして、“ラブ・ミー”?」