顔を洗って歯みがきを済ませると、部屋に戻ってきた仁香さんは超特急でおめかしをし始めた。
「きょうね、彼氏と会うの」
ワンピースを入念に選びながら、昨夜はじめて会ったばかりのわたしにも律儀に報告をしてくれる。
そう、こういうところとか、すごくひとりっ子っぽいなあと感じる。
それにしても意外な発言に思わず「えっ」と声を上げると、水色の花柄を体にあてがったままのフランス人形がこちらをふり向いた。
「なによ」
「え……ううん、なんでもない、です。いいなあと思って……」
「はーん。さては佳月、昂弥とあたしの仲でも疑ってたな?」
ぜんぜん図星じゃないはずなのに、まるで図星を突かれたみたいな気まずさを感じてしまうのは、いったいなぜ。
「まあたしかに、実のきょうだいでもない同世代の男女がひとつ屋根の下で過ごして、間違うなってほうが無理あるもんね」
「え……」
それは、つまり、間違ってしまったことがある、という……?
「まあ、昂弥はそこんとこ、ぜったい間違わないやつだけどね」
同時にばさりと、頭上へなにかが降ってきた。
今しがた仁香さんの体にあてがわれていたきれいなワンピースが、わたしの髪と絡まりあっている。
「それ、貸してあげる。あんなダッサイ服装でどこにも出られないでしょ」
「え……でも」
「人からの厚意は素直に受けとる! ついでにメイクとヘアも仕上げたら? せっかくお休みの日なんだし。一方的に見られてるだけってのも、なんかヤだし」



