アイ・ラブ・ユーの先で




肉体的にも、精神的にも、いろいろなことがあって疲れきったのか、けっきょく眠りこけてしまい、翌朝は仁香さんに起こされるまで目覚めもしなかった。

ふたりでリビングに起きていくとお母さんがいて、朝食にトーストとコーヒー、それからヨーグルトを出してくれた。


「うちの男どもって働きマンなの」


ずず、とコーヒーをすすった仁香さんが退屈そうに言う。


「パパも、昂弥も、休みの日はずーっと働きっぱ!」

「こら、仁香。パパは仕事柄しょうがないでしょうに」


よく似た顔のお母さんになだめられて、仁香さんはきまりが悪そうにぶうと頬をふくらませた。


「まあね。あたしやママにとって大事な日は、お店閉めてでもちゃんと駆けつけてくれるし」

「それはすっぽかしたら自分がへこむことをわかってるからよ。仁香が幼稚園のとき、一回だけどうしてもお遊戯会を見られなかったこと、いまだに引きずってるくらいなのに」


きのうの会話が夢じゃなければ、仁香さんと水崎先輩はきょうだいではないはずだ。

とすれば仁香さんは、本来ならひとりっ子なのかな。

でもなんだか、言われてみたら、そういう感じがしないでもない。


水崎先輩は、どうなんだろう?

どうして、お父さんとお母さんのもとを離れて、この家に住んでいるのだろう。


「それより仁香、お話するのもいいけど、あなたも急がないといけないんじゃない? きょうは約束があるんでしょう?」


時計をちらりと確認するなり、日本人離れした高い鼻がピクリと動いた。


「わー、ほんとだ! のんびりしてる場合じゃない!」


仁香さんがあわてて食べ始めたので、わたしもつられて同じスピードになってしまう。

きょうだいがいてこうなる人って、たぶん少なくないと思う。


兄、姉、弟、妹、そして、ひとりっ子。

いろんな立場があって、なんとなくでもその人の属性みたいなものがわかってしまうのは、きっとこういうほんの小さな出来事の積み重ねがあったりするからなんだろう。