「え……」
「なんか、けっこうふつうのコだね」
仁香さんは、わざととびきりの悪口をぶつけているような響きで言った。
この“ふつう”は、いい意味じゃなく、きっと悪い意味でとらえるべきだということ、よく考えなくてもすぐにわかる。
ううん。べつに、そんなのはいまに限ったことじゃなくて。
わたしにとって“ふつう”は、いつだって、どちらかというと悪い場所にある言葉だった。
『なんか、お兄さんと比べるとけっこうふつうなんだね』
『侑月ちゃんのお姉さんだとは思えないほどふつうですね』
ふつう。
もう、呪いみたいに聞こえてしまう。
“ふつう”って、なに?
「昂弥に対してなにかできる自信がないなら、中途半端に干渉してこないでね。ちなみにこれは、佳月のことも思っての発言ね」
じゃあオヤスミ、と言い残すと、仁香さんは部屋の明かりを真っ暗に消してしまった。
果てのない黒色に視界のすべてを奪われてしまったら、このあとどうすればいいのかわからなくなって、横になることも忘れて、しばらく布団の上にじっと座っていた。



