「え……うそ、って?」
「昂弥ってすごくまじめな男じゃん。そんなことくらい見ててわかんないの?」
いい人だとは思うけど、まじめはどうかな。いまいちピンとこない。
ああ、わたしは本当に先輩のことをひとつも知らないのだと、痛感する。
「あのさ、そんなしょうもない理由で、昂弥が学校サボるわけないからね」
じゃあ、いったい――どんな理由で?
「教えてあげないよ」
わたしの心をすっかり見透かしたかのように、仁香さんはぴしゃりと言った。
「昂弥がしゃべってないなら、あたしが勝手に言うのはルール違反でしょ。知りたいなら本人に聞いてよね。まあ、あいつの性格的にきっと佳月にだけは言わないだろうけど」
「な、なんで、わたしにだけ」
「言ったところでどうしようもなさそうだもん」
長い年月をかけて、少しずつ削ぎ取られてきた心のなかのへっこんでいる部分を、いっきにえぐり取られたような感じがした。
「――“阿部佳月”」



