「昂弥のほうがひとつ年上だけど、お兄ちゃんじゃなくて、元々はあたしのはとこ。うちのパパと、昂弥のママが、いとこどうしで」
なにを言われているのかよくわからないなりに、頭のなかで情報を整理してみる。
「え……っと、それは、水崎先輩の本当のお父さんとお母さんは、べつにいるってこと……でしょうか」
「え、待ってよ、佳月は昂弥のなにを、どこまで知ってるの?」
なにを、どこまで?
現状、わたしが水崎先輩について知っていることって、いったいなんだろう?
校則違反の黒いバイクで通学していること。だけど学校にはあまり来ないで、アルバイトに勤しんでばかりいること。スマートホンすら持っていないこと。佐久間というモデルさんみたいなイケメンのお友達がいること。プリンや杏仁豆腐でやたら餌付けしてくること。実は水もしたたるホニャララさんなこと。無遠慮で強引なところがあるけれど、きっと情に厚くて優しい人だということ。
それから、ほかには……。
「もしかして、なんにも知らないの?」
なんにも。
わたしは、もしかしたら、けっこう知っているつもりでいて、本当は先輩のことをなにひとつ知らないのかもしれない。
「なんにも、なのか……それはわからない、ですけど」
「じゃあ、たとえば、昂弥が学校休んでバイトばっかりしてる理由とか」
「あ……それは、新しいバイクを買うためだって」
中華料理屋さんで聞いたことをそのまま伝えると、仁香さんは盛大なため息をついたのだった。
ついでに「わあ」という感嘆詞がくっついてくる。
なんだか責められているみたいで、苦しくなる。
「あっきれた。そんなわかりやすい嘘、コロッと信じる人がいるんだね」



