湯上がりの完全なオフモード。
なにが違うのか明確にはわからないのに、外で見る先輩とはどこかが決定的に違っていて、なんだか見てはいけないものを見てしまっている気がする。
「これからがイイトコだったのに。ほーんと昂弥ってカラスの行水だよね」
「よけいなことばっかしゃべってないで、そいつ連れてさっさと寝ろよ」
「え? 佳月は昂弥といっしょに寝るんじゃないの?」
先輩はそれに対して華麗な無視を決めこみ、冷蔵庫からミネラルウォーターを取りだすと、勢いよくコップに注いでいっきに飲み干した。
「じゃ、おやすみ。仁香、夜通し無駄口叩かねえでちゃんと寝かせてやれよ」
こうして、なかば強制的に、わたしが仁香さんの部屋に宿泊するのは決定事項となったようだった。
ドアのむこうへ消えていく背中に、その部屋の主が「つまんなあ」と声を上げる。
わたしはというと、なんだかとても複雑な気持ちだった。
ほっとした、とも、ガッカリした、とも。なんというのにもしっくりこないような感情がポコポコ湧いてしまう。
つきあってもいない異性と一晩中ふたりきりで過ごすなんてありえないし、それに関してはもちろん、先輩の判断に全面的に賛成だ。
それでも、少しだけ気に入らないような感じがするのは、自分がここまで連れてきたくせに相手さえしてくれないで、いきなり知らん顔で放り投げられているから?
それとも――
バイクのうしろでぬるい風を切っていたとき、頭に鳴り響いていたサイレンの音が徐々に遠ざかって、完全に消えていく。
それが、ほんの少しだけ、さみしいような気がしてしまった。



