「ところでこれは単なるオジサンの好奇心なんだけど、佳月ちゃんは昂弥とつきあってる、でいいのかな?」
じっくり味わっていた茶色がぜんぶ鼻から飛び出すかと思った。
「そん……、な……なぜ、そのような発想に」
「いやあ、こないだとか今夜の状況を見たら、たいていの人はそう思うんじゃないのかなあ」
少年のように無垢な顔。
笑ったときの目元の雰囲気は似ているのに、こういうからかいをするときの表情は、先輩とぜんぜん似ていないんだな。
「ねえパパ、そういう無粋なことを聞くのはナンセンスじゃない? たしかに昂弥が女の子連れてくるのなんてはじめてだし、あたしもビックリしちゃったけど」
わたしと同じようにココアを飲んでいる仁香さんが口を尖らせた。
ほんとにねえ、と同調したのは隣にいた彼女のお母さんだ。
ただひとり「え」と反応してしまったのは、わたしだった。
はじめて、って?
「意外でしょ? ああ見えてぜんぜん女っ気ないの。ま、あたしたちに隠してるだけかもしれないけど」
18にもなってさあ、とバカにした感じに、だけどそれ以上の親しみを透けさせながらニシシと仁香さんが笑ったのと同時に、リビングのドアがおもいきり開かれたのだった。
「うるせえな。全部聞こえてんだよ」
現れたのは、濡れた髪からうっすら湯気を立ち昇らせた先輩だった。



