「下着もないんだよね? パンツはあたしの貸してあげるとして、ブラはちょっとでも大きさ違うやつ着けると形崩れちゃうから、カップ付きのキャミソールでいっか」
女子ふたりの脱衣所。目の前に、バスタオルや下着たちがどんどん積み上がっていく。
ひとりごとなのか、しゃべりかけられているのか、判断がつかないのでひたすら傍観していると、「なんとか言ってよ」とギロリとにらまれた。美人の迫力はとてつもない。
「ていうか、そうだ、あなたの名前まだ聞いてなかったね」
目鼻立ちは西洋の人のようにハッキリしているのに、すべてにおける色素が濃い、日本製のフランス人形のような出で立ちの彼女が、思い出したように顔を上げた。
そのまなざしは悪意よりも親しみの割合のほうが多い気がして、ほっとする。
「あたしは水崎仁香。仁義の仁に、香りで、仁香。そっちは?」
「あ、えっと、阿部佳月……です」
とても触り心地のいい着替えを胸に押しつけられるついでに、なぜかまじまじと、上から下まで査定のごとく観察された。
思わず背筋を伸ばすと、仁香さんはあまり納得いかない感じに「ふうん」と目を伏せたのだった。
「女の子なんだよね? 変わった名前してるね。男の子みたい」
ああ、そのことか。初対面の人にはだいたい同じことを言われる。
だけど、そういえば、本当にいまさらだけど、水崎先輩はそういうせりふを言わなかったな。
それどころか、ふりがなの振っていないネームステッカーを見て、悩みもしないでわたしの名前を『カヅキ』と読んだ。
まあ、圧倒的少数だけど、ごくまれにそういう人もいる。



