「昂弥! 一回すごい土砂降りだったでしょ! 大丈夫だった?」
バスタオルを持って奥から現れたのは、わたしたちと同年代くらいの女の子だった。
水崎先輩と同じ、真っ黒の髪と、かなり濃い茶色の瞳をしている。
このコのほうが女の子という感じにパッチリしているけど、自信ありげにつり上がった目元とか、ぱっと見ふたりはよく似ていて、ふつうに考えてお姉さんか妹さんかな、と直感した。
昂弥、と呼び捨てにしたからお姉さんだろうか。
それにしては少しだけ幼いような感じもする。
「ああ、仁香。ちょうどよかった。すぐこいつに風呂貸してやって」
「は!?」
え、と声を上げたわたしのそれにかぶせて、ニカと呼ばれた女の子のほうが数十倍ほど大きな声を出した。
「え? なに? ていうか、だれ?」
「捨て犬みたいなもん。だからなんも持ってねえし、着替えとかもおまえのやつ用意してやって」
「いや急にそんなこと言われても意味わかんないんだけど。とりあえず誰なの?」
「高校の後輩」
「はあ?」
当事者のくせに、さすがにこれ以上黙っているわけにもいかない。
だからといってなにをしゃべるべきなのかもわからないけど、とりあえず「あの」と言いかけると、ゆるいウェーブのかかった黒髪がふわりと目の前で揺れたのだった。
「なに、そのダサい格好。髪の毛もグシャグシャ!」
「え……」
仁王立ちで指をさされる。
ご指摘の通り、格好もダサければ、髪もグシャグシャなので、それに関してはなんの反論もできない。
「しょうがないからあたしのかわいいパジャマ貸してあげる。こっち来て!」
ガシッと手首を掴まれたと思ったら、そのままぐいぐい引っぱられた。
靴を脱ぐ暇さえ与えられず、仕方がないのでぽいぽい脱ぎ捨てる。
先輩が苦笑しながらそろえてくれるのが視界の端に見えた。申し訳ない。
いやしかし、この強引さにはかなり身に覚えがあるような。
先輩のほうをふり返った。たぶん、わざと知らん顔された。



