あんなにごうごうと降りしきっていた雨が、いつのまにかすっかりやんでいた。
公園の入り口に停めてあった、もはやお馴染みになってきた黒のいかついバイクは、その体じゅうに水滴の名残を宿し、月明りに照らされながら神秘的に輝いていた。
「そういやおまえ、ちゃんと連絡入れとけよ」
「え?」
「家族に。心配してるみたいだっただろ」
誘いだした張本人がそういうアドバイスをするもの?
だけど、たしかに無視しつづけて大げさなことになっても嫌なので、頭を冷やすために友達のところへ行く、必ず帰る、と、全員にむけてグループトークで発信しておく。
満足そうにうなずいた先輩の手から重たい球体を受けとった。
そういえば、いつもシッカリふたり分のヘルメットがあるけど、普段から誰かを乗せたりすることも多いのだろうか。
そんなことを能天気に考えながら後部座席に跨ったとき、おバカなわたしはやっとこさ重大な事実に気がついたのだった。
「あ……というかわたし、勢いで出てきたので、スマホ以外になにも持ってないです……」
「いいよ、べつに。困らない」
涼しげに答えた先輩がエンジンをかける。
条件反射でお腹に手をまわすと、ふたつの車輪はゆるゆると加速を始めた。



