アイ・ラブ・ユーの先で



そんな心を咄嗟に隠すようにシャツを羽織った。
天国のようにあたたかかい布は、やさしいにおいがした。

きっと、先輩のにおい。このやわらかい香りは、おうちで使っている柔軟剤の成分かな。ぜんぜん、似合わないな。


そのとき、お尻のポケットに入れているスマホがかすかに震えたのを感じた。

防水機能のない機種だけど、土砂降りの雨に濡れたことでの水没はしてしまわなかったみたいだ。


「あ……」


画面を見て、息をのむ。

いっきに時間が巻き戻り、現実に帰ってきたような感覚がした。


いっそ水没してくれていたらよかったのに、と思わずにいられない。


【お姉ちゃん、いま、どこにいるの? 雨降ってるけど大丈夫? そろそろ帰ってきてほしいよ。みんな心配してるよ。】


メッセージアプリの、家族で使っているグループトーク。

そこに、ぽこんと、遠慮がちに、だけどはっきりした意思をもって、侑月がわたし宛の文面を送ってきていたのだった。


「そうだ……帰らないと」


雨が降りだす以前のこと、大量の水分にぜんぶ流されてしまったせいで、頭のなかからすっかり消えかかってしまっていた。