だけど、道徳の授業で聞いた事があった。


親がいくら子供を虐待しても、虐待された子供は決して親を嫌いにはならない。


好かれようと必死で努力を続けるのだと。


長年虐待を受けていた子供は徐々に親に洗脳されていき、何が正しくて何が間違っているかの判断すらつかなくなっていくのだ。


その時は怖いな、と思った程度だったけれど、今目の前にいる可憐がその状態なのだ。


俺の初恋の人が、そんな状態になってしまっていたのだ。


目の前が歪む感覚がした。


どうしてこんな事になったのだろうと、考えてみてもわからない。


もしかしたら可憐の家では前触れがあったのかもしれない。


日々の生活の中で少しずつ少しずつ虐待という名の犯罪が行われていたのかもしれない。


一番近くにいると思っていたのに、気づく事ができなかった。


可憐がこんな事になっている間に、俺はいつもの日常を過ごしていたのだ。


ご飯を食べて学校へ行き、友達を遊んで宿題をする。


それだけでも吐き気がするのに、俺は可憐に振られたと感じていた。


最低だ。


俺はこの世で一番最低な男だ。