雪の降る日に、願いを消して

『駿、可憐が怖がってる』


桜子にそう言われて、俺はグッと言葉を飲み込んだ。


どうして?


俺は可憐を怖がらせるような事をしたことは一度もない。


なのに、どうして?


わからなくて、頭の中は混乱するばかりだった。


『大丈夫だよ可憐。誰も可憐の事を傷つけたりしないから』


桜子がそう言い、可憐の隣に座ってその肩を抱いた。


桜子は、可憐の肩に触れた瞬間少しだけ痛そうな表情を浮かべた。


が、それはすぐに笑顔になった。


『ずっと心配してたんだよ? 会えてよかった』


桜子はひとり言のようにそう言った。


可憐はチラチラと桜子を気にし始めている。


まるで人間を警戒している野良犬のようだ。


そうしている間にショウがペットボトルのジュースを3本も抱えて戻ってきた。


それを可憐の前に置く。


『これ、全部飲んでいいから』


ショウがそう言うと、可憐はおずおずとブドウのジュースに手の伸ばした。


が、キャップが開かないのだ。


その様子を見て俺は泣きそうになってしまう。


可憐はいつの間にそんな力さえなくなってしまったんだろう。


桜子が代わりにキャップを開けて可憐に渡した。


可憐はそれを一気に半分くらいまで飲み干した。


ようやく生き返ったかのように大きく息を吐き出し、目を閉じる。