ショウは駿と桜子が付き合っているという事実を知らなかった。


あの日、桜子が嬉しそうに駿と肩を寄せ合って登校してきた日の事を説明する内に、ショウの顔から表情が消えて行く。


小さな子供が母親に置き去りにされてしまったような、今にも大きな声で泣きだしてしまいそうな顔をして、俯いた。


しばらく黙ってあたしたちの話を聞いていたショウだったが、スッと顔を上げるとあたしを見た。


視線が絡み合い、心臓が跳ねる。


こんな時でもやっぱりあたしはショウが好きなのだとわかった。


「お前たちの考えている通り、俺は駿じゃない」


ショウが乾いた声でそう言った。


とても小さな声だったのに、鼓膜が割れんばかりに響いてくる。


「俺と駿は一卵性双生児で……って、これはもうお前らも気が付いてることだよな? クラスメートを騙せるくらいに似てるんだから」


ショウはそう言い、笑った。


その笑顔が痛々しくて見ていられない。


「元々駿……俺の弟は体が弱くて、学校を休みがちだったんだ。中学まではそれでもよかった、義務教育だから困る事はない。だけど高校は違う。


いくら勉強ができても出席日数が足りなければ進学もできない。だから俺たち2人は考えたんだ。駿の体調が悪いときは俺が代わりに学校へ行くってな」