「でも、このままじゃあたしたちが悪者になっちゃうよ?」


「そんなの、俺1人がやった事にすればいい」


躊躇なくそう言った聡樹に紗英は今にも泣きだしてしまいそうになった。


その瞬間、ようやくあたしは気が付いた。


今までずっと一緒にいたのに、どうして紗英の気持ちに気が付かなかったんだろう。


驚きと後悔が一気に湧き上がってくるのを感じる。


「そんなの……ダメだよ……」


紗英の声は震える。


「紗英、大丈夫?」


咄嗟にあたしは紗英の手を掴んでいた。


あたしの手が触れた瞬間、紗英は大きく身を震わせてあたしを見た。


その目には涙が浮かんでいる。


ダメだ。


あたしが何を言っても逆効果だ。


だって紗英にとってあたしは……。


そこまで考えた時、不意に紗英が立ち上がった。


そのまま教室を駆け出していく。


「おい、どうしたんだ?」


聡樹が驚いてそう声をかけるけれど、紗英の耳には届かなかった。


あたしはぼんやりと、紗英が今まで座っていた席を見つめていることしかできなかったのだった。