それからあたしたちは注意深く2人の事を見ていたけれど、特に変わった様子はなかった。


ただ、昨日の2人とは明らかに違う。


違うのに変わった様子がないということは、今までにも何度も同じ風景を見て来たからということになる。


桜子は駿を遠目に見て切ない表情を浮かべる。


駿は桜子のことなんて視界に入っていないように、クラスメートと会話を弾ませている。


この光景を、あたしたちは何度もこの教室で見て来たのだ。


今まで違和感を覚える程度で終わっていたことが不思議なくらいだ。


しかし、原因を突き止めるまではいかなかった。


そのまま放課後になり、桜子はすぐに教室を出て行ってしまったのだ。


まるでクラスメートたちから逃げるようにして。


何か質問をされたら嫌な事でもあるんだろうか?


そんな風に勘ぐってしまう。


「明日も2人の様子をしっかりと観察してみような」


聡樹がそう言い、あたしの頭に手を乗せた。


聡樹はあたしの恋の手助けをしてくれているのかもしれない。


「ありがとう」


あたしは聡樹にお礼を言い、教室を出たのだった。