春風さんは不満そうな顔をして黙ったままの私の机の前までやってくると、追求するかのようにジロリと目線を動かした。



「……椎名くんの良いところを、書くんだよ?」


「うん、」


「アンタ、書けるでしょ?なんで白紙のままなの?いっぱい、あるでしょ?」


「っ、」



バンッ!と机の上に置かれた用紙を叩いた。


椎名くんの良いところ……。

それは、きっとたくさんあるんだ。


みんなが思うクールな椎名くんの冷酷な一面も、本当は。


きっと、自分自身と関わることで、誰かに悲しみを背負わせないようにと作った距離で……。


心ない言葉に深く傷を負ったのは椎名くんの心だったのに。