あたしたちには未来がやってきた。


1度は諦めた明るい未来。


高校を卒業しすぐに結婚したあたしたちには1人娘ができた。


「マミ。おいで」


まだヨチヨチ歩きのわが子に声をかける。


大きな公園では沢山の友達が遊んでいて、今日が公園デビューのマミは少しだけ緊張している様子だ。


「飲み物買って来たぞ」


健が自販機でジュースを買ってきてくれた。


3人でベンチに座り、仲良く日向ぼっこをする。


とても心地のいい日だった。


だけどあたしたちは忘れたわけじゃない。


あの建物での出来事を。


あれから何度警察に行って何度説明しても、誰も信用してくれなかった。


建物がある事自体、誰も把握していない様子だった。


「そろそろ行こうか」


お昼が近くなり、あたしたち3人はベンチから立ち上がった。


公園を出て歌を歌いながら家への道を歩いて行く。


後方で車の音が聞こえて来た。


何気なく振り返ると、公園の入り口をふさぐように黒いバンが止まっていた。


「どうした?」


健が聞く。


あたしは「ううん、なんでもない」そう答え、マミの手をきつく握り直したのだった……。








END