「おい、何してるんだ!」


健がすぐに駆けつけてくれる。


しかし郁美はジッとあたしを見下ろしたままだ。


「どうして、健は明日花なんかを選んだの?」


「どうしたんだよ郁美」


あたしの隣の健が困ったような声でそう言った。


みんな手を止めてこちらを見ているのがわかった。


「健の方がどうしたのよ!? なんでこんな子を選ぶの? おかしいでしょ!!?」


それはここに来て初めて聞く郁美の悲鳴だった。


郁美は噛みを振り乱し、バンバンと両手でテーブルを叩いて叫んだ。


その勢いに気圧されたあたしは、健の腕に縋り付いた。


「ほら、そうやってか弱い女を演じてる!!」


そんなあたしに郁美が叫ぶ。


まるで駄々っ子のように足を踏み鳴らし、イヤイヤと首を振る。


「おい、落ち着けよお前」


見かねた弘明が郁美を止めに入る。


しかし、郁美は弘明の体を突き飛ばした。


「うるさい! 外野は黙ってろ!!」


弘明を睨み付け、罵声を飛ばす郁美。


だめだ。


誰が何を言っても効果はなさそうだ。


「い……郁美……」


あたしはそっと郁美に手を伸ばした。


あたしたち、親友でしょ?


そんな意味を込めてほほ笑む。