「聞かせてよ、全部」


私はクロの黒目がちの瞳を真っ直ぐ見つめたまま、素直な気持ちをはっきりと告げた。


夏の匂いを含んだ風が、そっと舞う。


背後でちゃぷんと小さな音が鳴り、水面が揺れたことを知らせた。


残された時間がないことはわかっているから、訪れた沈黙を一刻も早く破ってほしい。


「わかった」


そんな私の気持ちに寄り添うように、少しの間を置いてから彼の声が耳に届いた。


一度瞼を閉じたクロが、ゆっくりと息を吐いてから目を開ける。


その間に緊張感に包まれていくのがわかって落ち着かなくなっていったけど、小さな深呼吸をして平常心でいることを心がけた。


再び口を噤んだ彼は、まるでなにか大きな秘密を打ち明けるかのような顔つきで地面をじっと見つめ、膝の上で手を握っていた。


その様子を見ているだけで不安が訪れ、抑えようとしている緊張感とともに私を包む。


自分が今どんな顔をしているのか、そしてこれからどんな表情に変わっていくのか……。


それはわからなかったけど、少なくともクロの横顔を見ている限りでは明るい表情になれることはないと直感が告げる。


道路を走る車の音は聞こえてくるのに、夜の空気と緊張感がその音を遠ざけていくようだった──。