淡々と書かれたお婆ちゃまの文章は感情を押し殺しているようだ。

『私はアランを激励するため、アランにヴァイオリンを贈った。

私の期待と私との約束に、アランは懸命に弾こうと努力した。

が、アランの指はなかなか、思うように動かなかった。

学生時代。

アランと私は留学先でヴァイオリンコンクールに出場した。

心を寄せ合い、何れは結婚もと思っていた。

1年ごとヴァイオリン部門、ピアノ部門、作曲部門、声楽部門が順番に行われるコンクール。

もし最終選考に残ったら、「懐かしい土地の思い出」を弾こうと約束していた。

「共に最終選考に進めればいい。その時は、同曲対決になる」と話していた』


私の知らないお婆ちゃまの恋。

お婆ちゃまはアランを心から愛して尊敬していたんだと思った。