花束をもらったのなんて初めてだったし、目を合わせて『おめでとう』なんて言われたのもいつぶりだったか、思い出せないほどだった。
唯一、親が用意してくれていたケーキも、小学校に上がったころからなくなった。
誕生日だからって理由だけで特別な時間を過ごすなんてことはなかった。
だからか、こんな風に、私のためにこっそり用意してくれたプレゼントを手渡しでもらうのなんて、小さい頃以来で……。
ぬくもりのあるプレゼントが、〝おめでとう〟の言葉が、こんなにも気持ちを舞い上がらせるものだなんて初めて知った。
〝私のため〟が、花束にこもっていて、冷え切っていた胸の奥から温かさが溢れ出し、嬉しさに溺れそうだった。
目を伏せ、小さな声で「ありがとうございます……」と呟いた私に、湊さんが「そろそろ出ようか」と微笑んだ。
※試し読みはここまでとなります。



