相手が嫌な思いをしないように。
そう気を付けていても、言葉がキツかっただとか余計なひと言だったと自分で気づくのは、たいてい、声にしてしまったあとだ。
しかも、たまに素直なことを言えたとしても、それに気付いた途端、気まずさを覚えてすぐにその言葉を取り消すことを口にしてしまう。
今みたいに。
そういうのを直そうと思っているけれど……二十年間で身についてしまったクセはなかなか抜けてはくれない。
余計なひとことで、今度こそ嫌な思いをさせてしまっただろうか。
そう思い、表情を窺うと、それに気付いた湊さんがにこりと微笑んだ。
「これも、俺がそう感じただけだから、わからないけど」
そこで一度言葉を切った湊さんが、ゆっくりと言う。
「紗希ちゃんは、自分で言うほど性格悪くも生意気でもないよ。それに、女の子は生意気なくらいが可愛いと思う。いつも素直じゃない子が自分にだけ心を開いてくれたら嬉しいし、素直になれなくて意地張ってる姿も可愛いし。
まぁ、ただの俺の好みだけど」
微笑んだ瞳が、私をまっすぐに見つめる。
アルコールは飲んでいない。なのに、湊さんがあまりに色っぽい眼差しで見つめてくるせいで、頭がくらくらしているみたいだった。
「俺の好みだとかの話の前に紗希ちゃん可愛いし、もう少し警戒心を持ったほうがいいよ。こんなふうにほいほい男についてくるとすぐに手つけられちゃうから」
さっきまでの、明るい笑みとは違い、妖美に色を変えた瞳が私をとらえる。身を乗り出し距離を縮めた湊さんが、手を伸ばす。
「俺みたいな男に」



