御曹司といきなり同居!?



野球好きという共通点から、食事をしながらの話題のメインは、三月に行われたWBCだった。

私は正直、高校野球のほうが好きだから、プロにはそこまで興味はない。

でも、湊さんがしてくれる話は聞いていておもしろかった。

『開催時期が、シーズンのための準備に大事な時期だからね。故障する危険性があるなら、選手を出すべきじゃないって意見も多いんだよ。
ほら、球団側からすれば高額な年俸を払ってる選手にシーズン以外で故障なんかされたらたまったもんじゃないしね』

『優勝国に与えられるトロフィーって、ティファニーが作ったって知ってた? 俺、大学のときに知ってさ、そのとき友達と真剣に考えた。

たとえばWBCに出場して優勝してトロフィーもらって〝この勝利を彼女に捧げます〟とかいう言葉をプレゼントするのと、ティファニー行けばすぐ買えるオープンハートのネックレスプレゼントするのと、どっちが女の子は喜ぶんだろうって』

それは、私が野球にまだ興味があるからおもしろかったのかもしれない。

でも、湊さんの話し方とか柔らかい雰囲気だとか、優しい表情だとか。そういうものが、おもしろさのひとつの要因になっていたんだと思う。

そしてそこには、湊さんの人柄が表れているんだとも思う。湊さんが言った言葉のなかに誰かの悪口だとか、汚いモノはなかった。

私が不快に思うようなことだってひとつもなかったし、明るい話題が多かった。

若干の軽さは感じるけれど、それは悪い意味じゃない。言い方を変えれば、人当たりがいいとも言えるし。

だから、「湊さんは外見だけじゃなくて、性格でも好かれる人でしょ」と言うと。湊さんはわずかに驚いたような顔をしてから、ふっと目を細めた。

嬉しそうな微笑みを見てから、しまったと思い、付け足す。

「私がそう感じたってだけだから、わかりませんけど」

今、言った言葉は、湊さんを褒めたもので、間違っても不快にさせるようなものじゃない。
だから〝しまった〟なんて思う必要はないし、言葉をわざわざ付け足す必要だってなかったのに……と、自分の性格が嫌になる。