ここ最近、やたらとうまくいかなかったりしたせいなのか、考えがマイナス方面に走り出す。
それに気付き、ハッとして顔を上げた。
こんなの、さっき初めて逢ったばかりの湊さんにする話じゃない。
家族にだって弱音なんて吐いたことなかったのに、なんで今、湊さん相手になんて……。
気持ちが弱っていたからってどうかしてる。
「すみません、こんな話……」
不快にさせていたらどうしようと思ったのに。視線を戻した先で、湊さんは優しい顔をしていた。
おだやかで情に溢れているような……今の話ぜんぶを受け入れてくれているような顔。
思わず言葉を失うと、湊さんが言う。
「そんなに自分を責めることないんじゃない? 彼だって、紗希ちゃんが自分の気持ちに嘘をつけるような子じゃないってわかってて、好きだって言ってきたんだろうし。
なのに、耐えきれなくなったのは……まぁ、まだふたりとも若かったってだけだよ」
眉を寄せ微笑んだ湊さんに「誰が悪いって話じゃない」と言われ、思わず黙る。
誰かにこの話をしたことはない。でも、話したとき、どんな反応が返ってくるかなら考えたことがある。
〝たいして好きでもないのに流されて付き合うのが悪い〟
〝気持ちを言葉にしないのが悪い〟
〝彼が可哀想〟
だって、私が相談された立場だったとしてもきっとそう考えると思うから。
なのに、湊さんから言われたのはまったく違うもので……驚いたままなにも言えない私に、湊さんは優しい声で言う。



