通知表には、かならず人間関係が上手く築けない……というようなことが書かれていて、毎年繰り返されるその字に、ああそうなんだなって自分でも思うようになっていった。
両親だけが問題じゃなくて、もとからの性格がそうなのかもしれない。
とにかく、素直じゃないとか天邪鬼とか。そんな言葉を詰め合わせたような性格で、優しい言葉をかけようと頑張ってみても、いつも一歩遅くて、行動や言葉にできずに戸惑っているうちに、終わってしまう。
人見知りだとか、臆病だとか、パーソナルスペースが人より広いだとか。
そういう要素もあって、世の中をまったくもってうまく渡れていない……というのは、自分でもよくわかっていた。
「私のことを性格まで好きになってくれる人ならと思って、頷きました。時間をかけたら私も好きになれるかもしれないって思って。
もともと、恋愛に興味が薄かったからのめり込んだりはしなかったけど、でも、普通に好きにはなりました。一緒にいるのも楽しかったですし」
ひとつひとつ、思い起こすようにしてゆっくりと話すのを、湊さんはたまに相づちを打ちながら温和な表情で聞いていた。
ステンドグラスみたいな色合いのペンダントライトが落ち着いた明かりで席内を照らす。
「でも、付き合い出して二ヶ月が経ったころ、彼に聞かれたんです。『俺のこと男としてちゃんと好きか?』って。……私、頷けませんでした」
口元だけなんとか微笑んで見せた私に、湊さんは少し黙ったあと聞く。穏やかで真面目な顔だった。
「彼との想いの差みたいなものを感じたから?」
的確な答えに驚きながらも頷いた。
「好きは好きだけど、それが特別な感情かって考えたらそうだとは思えなくて。『ちゃんと好きか?』って聞いた彼はたぶん、そういう私の気持ちに気付いてたんだと思ったら、嘘もつけなかった」
「だからさっき、誰かのためになるならって言ったんだ」
「はい」と頷いてから、カップの中のクマに視線を落とした。



