御曹司といきなり同居!?



「それは、地毛? 綺麗な色してるけど」

聞かれて、「ああ、はい」と、鎖骨のあたりまで伸びた栗色の髪を指先で触った。
パーマはかけていないけれど、ストレートとも言いにくい猫っ毛も生まれつきだ。

「元々色素が薄いんです。高校のころとかは、よく風紀検査で引っかかりました。あと、先輩に生意気だって言われたり」
「へぇ……そういうこと、実際にあるんだ。ドラマだとかそういうものの中だけのことだと思ってた」

感心したように言われて、そんなに珍しいことでもないのにと不思議に思う。
見た目が派手な一年生が、先輩に目をつけられてアレコレ言われるのは普通だと思うけれど……。

湊さんが通っていた高校は違ったのだろうか。

「やわらかそうな髪質だよね」
「そうですね……猫っ毛なので、寝癖とかつきやすいし、よく跳ねちゃうんですけど」
「でも、ふんわりしててよく似合ってる。紗希ちゃん、モテるでしょ」

口元に笑みを浮かべたままじっと見つめてくる湊さんに、そういえばさっきもそんなことを言われたなと思い出し、ため息を落とした。

「モテませんよ。正直、見た目だけで近づいてくる人はいなくもないですけど、みんな、中身を知ったら離れていきますから」
「中身って、性格?」

「私、全然素直じゃないんです。生意気だし憎まれ口とかすぐ叩いちゃうし……それなのに、へんなところで嘘がつけないから。気付いたら相手を傷つけちゃっていることが多いんです」

ふーっとカフェラテに息を吹きかけてから白いカップを口に運ぶと、インスタントとは違い、クセのない苦みが口に広がった。

泡に描かれているクマが崩れないようにとそっと飲んでから、そもそも飲む前にスプーンでかき混ぜるべきだったのかと疑問に思う。

コーヒーの飲み方にも作法のようなものがあるのだろうか。

そう思い、無作法な飲み方をしてしまっていたらどうしようと不安になっていると、湊さんが「嘘ってどういう嘘?」と聞いてきた。

穏やかな表情とトーンで、湊さんが続ける。