「……それこそよく言われるんじゃないですか」
「んー、まぁ、言われないこともないけど、まさか紗希ちゃんがそう思ってくれてるなんて思わなかったから、嬉しくて。会ってから今までずっと、俺に興味なさそうだったし」
弧を描いた口で言われ、素直な返事に少し好感を持つ。
〝いや、全然言われないよ〟なんて謙遜されるよりもよっぽどいいなと思った。
「興味ないっていうよりも、もともと表情にでにくいので、なにに対してもこんな感じなだけです。なので……その、不快な思いをさせてたらすみません。デザートだけじゃなくて、料理も、すごくおいしいと思ってました」
さっき言われたことが気になって、もごもごと言うと、湊さんは少し驚いたように目を開いてから、ハハッと笑った。整っている顔が、一気にくしゃっと笑みに変わり、あどけなさが覗く。
私自身が表情が乏しいからか、こんな風にくったくなく笑える様子に目を奪われてしまった。
「いいよ、そんなの全然。もしかしてずっと気にしてたの?」
笑みをこぼしながら言われ「だって」と目を逸らしながらボソボソと言う。
「こんな、雰囲気も素敵でお料理もおいしいお店に連れてきてもらったのに、おいしいって顔ができなくて申し訳ないなって……」
「いや、強引に連れてきたのは俺だし。ただ、デザートを前にしたときの紗希ちゃんがすごく嬉しそうに見えたから、それを言いたかっただけだったんだけど……ごめん。言葉が軽率だった」
そう、申し訳なさそうに言った湊さんが「不快な思いなんて少しもしてない」と微笑むから、「……そうですか」とだけ答える。
それから、デザートと一緒に運ばれてきていたカフェラテに手を伸ばした。
ラテアート……というのだろうか。クマの顔が描いてあって可愛い。
湊さんのは、葉っぱが描いてあるから、色んな種類があるのかもしれない。



