段差を走るたびに自転車のカゴに入れている鞄が大きく跳ねた。


中に入っているライトが壊れてしまわないかと、時々不安になる。


旧校舎の近くまですると、そこに人影があるのが見えた。


誰だろうか?


息を切らしながら自転車を止めて、邪魔にならないところに置いた。


ライトを付けて近づいていくと人影は陽であることがわかった。


「陽、もう来てたんだ?」


そう声をかけても、陽はこちらを見ない。


ジッと旧校舎の2階を見ている。


「陽、なに見てるの?」


隣に立ち、同じように2階を見上げる。


旧校舎は相変わらず不気味な雰囲気を醸し出していて、見ているだけで鳥肌が立ってくる。


「あそこ、見て」


陽がそう言い、2階の一番端にある窓を指さした。


「なに?」


真っ暗でなにも見えない。


「さっきから人影が見えるんだ」


「え、うそでしょ?」


旧校舎の中に明かりはついていない。


人影があったとしても、それは見えないはずだった。


だけど……。


陽が指さした窓をジッと見ていると、確かに黒いものが動くのが見えたのだ。