Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-




 どこか几帳面なノックの音が響く。


アルザだろうか、と思った矢先、扉の外から若い男の――しかしアルザのものではない声がした。



「リーラ姫殿下、レグナムでございます」



 どうぞ、と、少なからぬ落胆を隠してリーラが言うと、失礼いたします、という声と共にレグナムと名乗った男が扉を開けた。


入ってきたレグナムは並の男よりも頭一つは背が高い。


しかし不思議と威圧感を与えないのは、深い瑠璃色の髪が彼に落ち着いた印象を与えているという理由も一つだが、何より彼の目がいつも閉じられていることが大きいだろう。


弱冠二十二歳にしてアルザ専属の護衛を務めるレグナムは目が見えない。


彼はウィオンのクーデターのときからアルザと共に戦ったことで有名だが、噂ではそのときからすでに目が見えていなかったと言われている。



「リーラ姫殿下、ご機嫌麗しゅう。本日はいかがお過ごしで?」



 アルザの護衛であるレグナムは、ご苦労なことに最近はアルザとリーラの連絡役でもある。


日に一度リーラの様子を見にきては、おそらくはアルザに報告しているのだろう。