ゆっくりと、泰然と、リーラは白い階段を上る。
白は真実の色。
偽りない心の色。
この謁見の間では、誰も言葉を偽ってはならない。
表情も歩調も変えず、右の玉座へ腰掛ける。
その背後にレグナムが立つ。
静まり返る人々を見渡した。
この先リーラが渡り合っていくべき三百の顔がそこに並ぶ。
朝の謁見には、身分の低い者から来るのが習わしだ。
リーラの後に来る者は、アルザただ一人。
音もなく、ゆっくりと西の扉が開いた。
「やぁ、おはよう、皆の者。今日はいい天気だな」
厳かな静けさの中、気の抜けるほど明るい声が響いた。
「皆驚いただろうが、今日から朝の謁見に我が妃リーラも顔を出すことになった。まだウィオンに来て日が浅く、わからないことも多いだろうから、容赦してやってくれ」
まるで同輩に新人官吏を紹介するような気軽さで、アルザは言う。
それが可笑しくてほんの少しだけ笑うと、それまで肩に力を入れすぎていたことに気づいた。
「じゃあ、始めようか。まずは宰相、今日の報告を」
アルザが玉座に腰掛けて言うと、宰相は浅く頭を垂れ、丸めて持っていた紙を広げた。