自分と二つしか違わないのに、ひどく大人びた物言いをする兄が、誇らしく、ときどき悲しかった。


兄をここまで大人びさせてしまったのは、周囲の心無い言葉が理由だと、知っていたから。



――あたくしは、民だけでなくラシェル兄様もお守りしたいわ!



 兄に抱きついてそう言うと、兄はいつも太陽のような笑みを向けてくれた。



――ならば良い姫になれ、リーラ。いつかお前は他国に嫁ぐことになるだろう。シュタインの民と同じくらいその国の民を思う、良い姫、良い妃になれ。……おまえには、酷なことだが。



 兄の笑みがわずかに陰る。

苦しげな眉が痛々しくて、リーラは小さな手で兄の手を握る。



 嫁ぐ。


子供ながら、一国の王女として育てられたリーラは、その意味を熟知していた。


そして、兄の言うことが本当だと。


良い姫、良い妃となることが、将来この国の王となる兄の助けになる。



――兄様の助けとなれることが、辛いことなわけありませんわ。だから、そんな顔をなさらないで。



 兄のまぶしい笑顔を取り戻したくて、そう言っても、兄の悲しげな笑みは消えなかった。


いつも、いつもそうだった。