寝具にくるまったまま、じっと耳を澄ませる。
今度ははっきりと聞こえた。
コツ、コツ、と。
ゆっくり、足音をできるだけ立てないようそっと、歩みを進める、音。
人の気配。
だんだん近くなっていくその音が、ふいに止まった。
――リーラの部屋の前で。
じっと息を殺して、リーラは思考をめぐらせる。
扉の外には衛兵がいつも控えているはずだ。
けれど、耳を澄ませても何の物音も、話し声もしない。
誰かが何かのついでにリーラの部屋の近くまで来たとして、部屋の前でじっと止まっているのに、話し声も物音もしないのは不自然だ。
――ということは、衛兵はいない? あるいは、話せる状態ではないのだろうか。
頭の芯が冷たくなっていく感覚。
賊、あるいは暗殺者だろうか。
シュタインとのつながりを良く思わない者も、リーラの耳には入ってこないながらも一部には存在しているのだろう。
神殿に出向いたことで多少は目立ったリーラを、芽の小さいうちに消そうと考えたのかもしれない。
部屋の前にいる人物が、なぜ動かないのかわからないが、今のうちに、こちらが動かなければ。